旅行中の病気というと、誰でも深刻な状況を考えがちですが、旅行中に起きる疾患は未然に防げるものが多いです。中でも消化器に関係する病気は全疾患の35%もあります。勿論季節による差はありますが、腹痛と共に嘔吐、下痢、又は便秘等を伴い、時に蕁麻疹や頭痛が現れます。そうすると殆どの方はなんらかの薬を服用し、更に病状を悪化させてしまいます。 その原因は海外旅行という特殊事情に大きな責任があります。◆お腹が痛い◆
飛行機を降りた途端にどうもお腹の調子がおかしい。なにか悪いものがあっただろうか、と考えてみてこれといって思い当たる食事の内容ではなかった。そのうちに、気持ちが悪くはなる、下痢はする、果ては熱まで出始める。 最近このような症状で連絡を受ける割合が増えてきました。ほとんどの場合、食事内容そのものには問題はないのですが、飛行機に乗る前に大変疲れていたり、時差の調整が出来ず体調が悪かったりすると、消化不良を起こしあたかも食中毒を起こしたかのような症状を呈したりします。このような時には先ず食を断ち、水分補給をしてください。慌てていろいろな薬を飲まないで、一日様子を見てください。もし下痢症状はなく、反対に数日間便通のない場合には、吐気を伴うことも多いですから先ず排便を促すことです。従って飛行機の中での食事は出来るだけ軽めに、しかもジュースやアルコール飲料は極力控えめにすることです。機中環境と時差未調整は地上では考えられない程消化器機能を狂わせる大きなファクターです。
◆どうも風邪気味だ◆
旅行先で発熱し、倦怠感が出始めるとそれこそ観光も仕事も続けられなくなり、無理をすると経過が長引くだけでなく、思わぬ病気に発展してしまいます。日本に居れば、早く対処できたのに海外であったがために病気を重いものにしてしまうことがよくあります。従って38度からの発熱があって、解熱剤を服用したならば、先ず移動を中止することです。そして極力軽い食事に切り替え、体力を落とさないように、とにかく休むことが大事です。簡単なことなのですが、以外と忘れがちで、しかも病気を甘く考えてしまう人が最近は多いです。もう一つ言わせていただけるならば、日本を発つ時に、発熱し、風邪を引いていたならば、なにはともあれ、出国を控えることです。旅先で風邪が治ることは例外はあっても可能性は少ないということをお忘れなく。
◆急性心身症◆
世の中交通事情が良くなれば成る程、確かに時間が短縮され便利になるわけですが、一方身体の方はどうかというと、逆に情緒精神面のストレスが解消されずに生理機能に異常を来すことが多いようです。症状としてはメマイ、吐気、頭痛、発熱、心悸亢進、不眠、便秘等々実に多彩です。従来は長期滞在者に現れる事が多く、所謂、環境適応障害による自律神経失調として診断されました。しかし近年は短期旅行者にこの傾向が強く、単なるカルチャーショックとは言い難い急性症状が顕著です。従って旅行者は不安なままにいろいろな薬を使ってしまい、益々複雑な病状になってしまいます。元は心身のアンバランスから来ているので、心身共にリラックスすれば、元の健康状態に戻ります。ところが、現代というのはそこが難しいのですよね。
◆地中海地域で注意すべき疾患◆
地中海沿岸地方では、ネズミ・ノミの媒介による発疹チフス及び蚊媒介による西ナイル熱(West Nile Fever)の流行が散発的に見られる。皮膚・内蔵リュウシュマニア(cutaneous and visceral leishmaniasis)、砂蝿熱(sandfly fever)発生の報告もある。東部南部地方では、ダニ媒介性脳炎、ライム病、齧歯類媒介の腎出血熱がある。南東南西地方では、夏から秋にかけて細菌性赤痢(bacillary dysentery)及びその他の原因による下痢、腸チフス(typhoid fever)等の経口感染症が広く高頻度に発生することがある。地中海沿岸の南東南西部ではブルセラ症(brucellosis)があり、南東部では包虫症(echinococcosis,hydatid disease)が現在も見られる。一部諸国から肝蛭症の報告がある。近年、サルモネラ・カンピロバクター感染症が北部ヨーロッパ同様にこの地域でも増加している。ルーマニア、旧ユーゴスロビアでは、今でもポリオ汚染地域である。アルバニア、ブルガリア、ルーマニアにおけるB 型肝炎(hepatitis B)ら患率は依然高い。野生動物からの狂犬病は、ジブラルタル、ポルトガル、マルタ、モナコを除く南部ヨーロッパ諸国全域に存在する。
-臨床成人病26巻11号より-◆◆
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