イタリアの国民年金制度の内容


 

全国社会保障機関   Istituto Nazionale per la Previdenza Sociale (INPS)

年金制度の企画は,労働社会保障省が担当している。公的年金制度を運営する中心的な機関はINPS
(全国社会保障機関)である。INPSは国から独立した公社であり,すべての民間労働者,公社の職員,自
営業者の一部などに関する年金事業を担っている(公的年金制度の被保険者のうち78.6%をカバー,2004
年)。このほか,国家公務員,地方公務員,上級管理職および自由専門職(ジャーナリストや興行労働者,
医師等)などについては,独自の基金・金庫が存在する。
このINPSが所管する各種の保険は以下の通りである。

{A-1} Pensione sociale.  社会的年金

1995年12月31日現在、65才に達するイタリア在住のイタリア国籍あるいは欧州連合諸国民で、保険料支
払い経歴もなく、収入皆無かあるいは法的にきわめて少額収入の場合、生存に必要な最低保障の社会扶助給付。
支給対象者は住民登録(la residenza)とイタリア国籍証明( la cittadinanza)を必要とされる。
1996年1月1日以降、社会的年金は社会手当(Assegno sociale)に移行された。

{A-2} Assegno sociale.  社会手当


65才に達するイタリア在住のイタリア国籍あるいは欧州連合諸国民で、保険料支払い経歴もなく、収入皆
無かあるいは法的にきわめて少額収入の場合、生存に必要な最低保障の社会扶助給付。
欧州連合諸国民の場合は、イタリア滞在許可証( carta di soggiorno)か長期 欧州連合国滞在許可証
( permesso di soggiorno CE per i cittadini)を必要条件とする。
ただし、2009年1月1日より、法的に適合した条件で最小年月10年間イタリア在住が必要である。

 

{A-3} 最小年金(pensione minima): 516ユーロ年金 


国内国外在住を問わず社会年金(pensione sociale, assegno sociale)受給資格を有する70歳に達した人に支給される。
2001年12月28日発行の法令448の38項により、月々516,46ユーロ支給額は2009年には594,64ユーロ支給額に増額された。

 

 

{B}   勤続年金 (Pensione di anzianita)  

「老齢年金」の年齢条件を満たす前に、所定の年齢と保険料支払期間に達した場合、対象者の申請にもとづいて支給されるもの。

勤続年金受給要件:
給料受給者( サラリーマン )の場合は、男女とも58才かつ保険料支払期間35年。自営業者(手工業者、商業・農業従事者)の場合は、男女とも58才、35年。年金受給最低資格条件は35年勤続である。ただし、給料受給者(サラリーマン)については37年間、自営業者については40年間保険料を支払えば、年齢に関係なく年金を受給できる。
だが、給料受給者についても、2008年までに、この保険料支払期間の制限を下表の通り、段階的に40年まで引き上げることとしている。また、勤続年金を受給するには、退職することが条件となるが、自営業者は仕事を継続できる。

2009年6月以降は「割当制度」Sistema dell quoteを適応する。
戸籍最低年齢+保険料支払い35年間=加算年数
給料受給者の場合;

2009年7月1日から2010年12月31日までの間では、59歳+ 保険料支払い期間=95(加算年数)
2011年1月1日から2012年12月31日までの間では、60歳+ 保険料支払い期間=96(加算年数)
2013年以降では、61歳+ 保険料支払い期間=97(加算年数)
就業勤続年数が40年に達している場合には年金支給最低年齢に達していなくても支給される資格がある。

年金受給最低資格条件は35年勤続


                           給料受給者                    自営業


     期間                     加算数         戸籍年齢        加算数         戸籍年齢


01/07/2009から31/12/2010まで        95            59             96            60


01/01/2011から 31/12/2012まで        96            60             97            61


01/01/2013以降                  97            61             98            62

 

{C}   老齢年金 (Pensione di vecchiaia)

この年金を受給するには、1)年齢、2)保険料最低支払期間、3)退職の3要件を満たさねばならない。ただし、自営業者に対しては、第3項は不要である。
1996年1月1日現在、男性65歳、女性60歳に達しており、保険料支払い期間が最低5年以上であることが条件である。
年齢と保険料支払期間に応じて、年金の給付算定方法が「給与額」に基づくか「支払い済み保険料」に基づくかのバリエーションが出てくる。

 

{C-1} 給与基準計算方式: Sistema Retributivo 報酬方式


労働の最終期間(サラリーマン10年、自営業者15年)の給与をもとに計算される。ただし、1995年12月31日までに、少なくとも18年保険料を支払った者は、本方式が認められる。
支給開始年齢 男子65才、女子60才ただし、通常の20%程度の労働能力、および目の不自由な場合は、男子60才、女子55才。
保険料支払い期間 少なくとも20年の支払期間があること。 ただし、1992年12月31日までに15年間保険料を支払った者は、本方式が認められる。

    報酬方式について:


1968 年に導入された報酬方式(1968 年委任立法488 号)により, 最大で退職前報酬の80%が保障される仕組みがとられていた。この報酬方式は, 年金額を報酬に直接に比例させて計算するもので, 仕組みとしては日本の厚生年金制度と同じである。ただし, イタリアでこの当時導入された報酬方式によれば, 年金額を退職直前の5 年間の平均報酬に基づいて算定することになっていたので, 日本の厚生年金のように被保険者であった全期間の平均標準報酬を算定の基礎とする場合よりは, 受給額が高額になる。もっとも, 近年の改革によって, 参照される報酬の期間が引き延ばされ(とくに,1993 年1 月1 日以降の新規採用者については全就労期間の平均報酬が参照される(1993 年8 月11 日委任立法373 号)),また, 1996 年1 月1 日以降の新規採用者につき, 拠出に基づいて給付額を算定する拠出方式が導入されたことで(1995年法律335 号), 現在ではこうした「寛大な」仕組みは修正されている。

 

{C-2} 保険料基準計算方式: Sistema Contributivo  拠出方式

男性65歳、女性60歳に達しており、保険料支払い期間が最低5年以上であることが条件である。
2008年1月1日から2009年12月31日までは、保険料支払い期間が35年で60歳に達していること。
(自営業の者は61歳)
2010年1月1日から2013年12月31日までは、保険料支払い期間が35年で61歳に達していること。
(自営業の者は62歳)
2014年1月1日からは、保険料支払い期間が35年で62歳に達していること。
(自営業の者は63歳)
但し 保険料支払い期間が40年に達している場合は、年齢は問わない。

現行ないし今後行われる制度で、支払われた保険料の総額もとにして、国内総生産の動向による再評価を加え算出する。
支給開始年齢 男女とも57〜65才間で、この年金を取得できるが、65才以前に年金を取得する場合は、社会的年金の20%以上を条件に支給される。
保険料支払い期間 正規の労働による少なくとも5年間以上の支払期間があること。

{C-3} 混合方式: Sistema Misto o Pro Rata


1995年12月31日現在で、保険料支払いが18年未満の者は保険料基準/給与基準の混合方式で計算される。

 

{D} 労働不可能者年金 (Pensione di inabilita)


(肉体的、精神的な重度の障害により働けない場合に支給されるが、治癒度に応じ減額される)

{E}  障害者年金 (Assegno ordinario di invalidita)


(前項に比べ軽度であり、通常の3分の1程度以下の労働能力しかない場合)
但し 5年保険料支払い期間うち3年間保険料支払い完了を条件とする。

 

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