ダニ媒介性脳炎について

Tick-Borne Encephalitis; TBE


初夏髄膜脳炎(FSME)とも言われ、ヨーロッパ中部に流行する中央ヨーロッパ型の他に、ロシア春夏脳炎(Russian Spring-Summer Encephalitis)と呼ばれる極東型の二種類が知られている。中部ヨーロッパの森林地帯を中心に局地的な流行地域があり、以前は農業従事者の職業病として知られていたが、最近では一般住民や旅行者に感染が広がり、流行地域が拡大している。
本症はフラビヴィルス属の病原ヴィルスを媒介するマダニ(Ixodes ricinus)から感染する。I.ricinus は高さ1m以下の下草に好んで生息し、通常1,000 m 以上の高度では滅多に見られない。
臨床的特徴は他の脳炎と同様に、急性の発熱・髄膜刺激症状・意識障害である。本症には効果的な予防ワクチンがある。所定の3回の予防接種で基礎免疫が獲得され(その免疫効果は99.6%)、最低3年間の持続効果がある。萬1歳以上の幼児では、1回目の接種後に短期間発熱をみることがあるが、これはほとんど一過性で無害であるため、出来るだけ予防接種を勧める。ダニに刺されてから72時間以内または1回目の接種から2週間以内にダニに刺された患者に対しては免疫グロブリン療法が適用される。



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